インドネシア法務の特徴

事後救済の困難性

法的安定性の高い国家では、客観性の高い法規範が存在しており、行政機関や司法機関を含む全ての者がその適用を受けることが制度として確立しているため、何等かの行為を行う場合にその法的な効果を事前に予見できる可能性が高く、その法規範に応じて適法な行為を行ってさえいれば、仮に事後に問題やトラブルが生じたとしても、最終的には警察機関や司法機関を通じて適切な解決を受けることができます。

一方、インドネシアを含む新興国では、法制度が依然として成熟の過程にあり、客観的な法規範に基づく予見可能性の高い法制度が確立しているとは言い難い上に、汚職の問題もあり、未だ法的な安定性が十分に確保されているとはいえないため、問題やトラブルが生じた場合には、警察機関や司法機関を通じて適切な解決が受けられるとは限らない傾向にあります(この法制度の不安定さや警察/司法機関等の腐敗の実状に関する具体的な事実は、その性質上サイトへの掲載は困難ですが、インドネシアでの予防法務の必要性をご理解いただく上で重要ですので、トップ画面の問い合わせフォームを通じてご連絡をいただけましたら、WEB会議にて説明させていただきます。)。

また、その問題/トラブルの性質によっては、駐在員が当局による身柄拘束やアンダーテーブルな性質の金銭の要求を受けるリスクもあり、そのような問題/トラブルはある日突然顕在化するケースも少なくありません。

したがいまして、インドネシアでは、問題/トラブルを未然に防ぐ予防法務の実践が日本以上に重要であり、経験に照らし、そのための最も有効な手段は、日々の業務の中で疑問点/違和感/必要性等を感じた場合にそれを放置せず、直ちに法律関係を確認して問題/トラブルの芽を早期に発見し、摘み取ることのできる体制を整えておくことだと考えます。

そのような体制として考えられるのが、インドネシア子会社にインドネシア法務の経験が豊富な日本人駐在員が常駐する法務部を設置することですが、コストの問題や駐在可能な外国人の人数制限の問題等があり、そのような対応は容易ではないようです。

そこで、その法務部の機能を代替し、実効性のある予防法務の手段として活用いただくことのできるサービスを提供させていただきたいと考えたことが、本サイトを立ち上げるきっかけとなりました。インドネシアでの予防法務を実効性のある形で実践するために、是非、本サイト及び本コンサルテーションサービスをご活用下さい。

コンプライアンス対応の困難性

ビジネスを行うことを道路を走行することに例えた場合、「制限速度が不明確な道路を走行するようなもの」と言えば、インドネシアでのコンプライアンス対応の難しさをイメージして頂き易いように思います(なお、日本法上「制限速度が不明確な道路」というものはありませんが、ここでは、インドネシアでのコンプライアンス対応の困難性をイメージして頂くために、便宜上、「制限速度が不明確な道路」が存在すると仮定しています。)。

法的安定性が高い国家では、前述のとおり何が適法で何が違法かを事前に予見できる可能性が高く、上記例示を用いれば、時速65km以下での走行は適法、時速70km以上での走行は違法であり、適法か否かが明確とならない不明確ゾーンは時速65kmから時速70kmの範囲に止まる、といったイメージとなります。

この場合、ある会社が時速65kmで走行し、他社が時速67kmで走行したとしても、その速度差は大きくないため、ビジネス面で大きく引き離されることはありません。

一方、インドネシアを含む新興国では、前述のとおり法的安定性が十分に確保されているとは言い難く、何が適法で何が違法かが事前に明確になりづらい傾向にあり、上記例示を用いれば、時速50km以下での走行は適法、時速120km以上での走行は違法であり、不明確ゾーンは時速50kmから時速120kmまでの広範囲に及ぶというイメージとなります。

この場合、ある会社が安全に時速50 kmで走行し、他社が時速100kmで走行した場合、その速度差は2倍となり、あっという間に引き離されることとなってしまいます。

すなわち、インドネシアを含む新興国では、コンプライアンスの意識を強く持ち、適法であることが明確なラインでビジネスを行おうとすると、他社との競争において大きく引き離されることとなりかねず、それを回避するためには、不明確ゾーンの中から適法と考えられる極力早い速度を自ら選択する作業が必要となり、この点に、インドネシアでのコンプライアンス対応の難しさがあるといえます。この不明確ゾーンの中から最適な速度を選択する作業では、法令の文言、罰則の内容/軽重、当局の見解、実務運用、他社事例等の複数の種類の情報を総合考慮して判断することが重要となります。

この点、日本的な感覚では、弁護士等の専門家に依頼すれば、不明確ゾーンの中から最適な速度を選択してもらえると考えるかもしれません。しかしながら、不明確ゾーンは専門家との関係でも不明確であることに変わりはないため、専門家により回答内容が大きく異なることが少なくなく、実務では、いずれの専門家の回答が妥当かの判断に苦慮するケースが頻発しています。

一般論として、企業法務を中心に取り扱う現地の大手法律事務所の回答は、コンプライアンスを重視したコンサバティブなものとなる傾向にあり、上記例示を用いれば、時速60kmで走行すべき、といった回答となります。しかしながら、そのような回答は、他の多くの企業が時速80kmで走行しているような実務状況にある場合、クライアントにおいて容易に受け入れられるものではなく、再考を要請することが少なくありません。インドネシアでは、リーガルサービスに時間がかかる傾向にあると言われますが、その要因の1つに、前述のとおり不明確ゾーンが広いため、最適な回答が得られるまでの専門家とのキャッチボールの回数が多くなってしまうことがあるように思います。

この種の問題については、経験上、専門家に質問をする際に「時速何kmで走行すべきか?」というオープンな形での質問ではなく、「〇〇法第X条Y項に基づき時速80kmでの走行が可能と考えるが、その理解で問題ないか?」というクローズな形での質問をすることが極めて有効であり、そのメリットをまとめると次のようになります。

  • 希望する回答が迅速に得られる可能性が格段に上がる。
  • 的外れな回答を受けるリスクがなくなる。
  • 依頼する作業の範囲を限定することができ、コストを下げることができる。

このクローズな形での質問を行うためには、専門家が納得するだけの確度を備えた出所の明確な法令に関する情報が必要となりますが、本サイトでは、そのような情報を取得していただける上に、専門家への効果的な質問方法についてもアドバイスさせていただきます。

以上

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